すべての献血でHIV-2型の検出が可能に―日赤
2008年8月28日
献血された血液のウイルス検査で、全国すべての献血について、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)の検出が可能な体制が整った。東京都江東区の日本赤十字社中央血液研究所の検査施設で検査機器・試薬が切り替えられたことで実現した。
日赤ではこれまで、製品化前のすべての献血血液について、北海道千歳市の血漿分画センター、京都府福知山の血液管理センター、そして東京都大田区の検査施設の3カ所で、核酸増幅検査(NAT)を行ってきた。NATでは1999年から、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの検出検査を行ってきた。ただし、HIV-1型の検出は可能だったが、HIV-2型の検出は不可能だった。
これに対し日赤では、献血血液から製造される輸血用血液製剤の安全性を高めるため、各センターで順次検査機器と検査試薬の切り替えを実施。今年6月1日に千歳市の血漿分画センター、7月30日には福知山の血液管理センターで切り替えられている。東京都大田区の検査施設は、中央血液研究所に移転、機器、試薬を切り替え、8月27日に本格稼動した。これにより、国内すべての献血血液でHIV-2型の検出が可能になった。
中央血液研究所の内田茂治・核酸増幅検査部長は、HIV-2型について、「主に西アフリカで流行しているウイルスであり、インドでも感染者が複数見つかっている。また、西アフリカで輸血を受けた日本人の感染も確認されている」と説明した。その上で、「世界的な(人の)動きが激しくなっている。日本にもいつ飛び火するか分からない」と語り、全国的にHIV-2型の検出が可能になったことの効果を強調した。
【核酸増幅検査(NAT)】
ウイルスの遺伝子を構成する核酸(DNAまたはRNA)の一部を約1億倍に増幅することによってウイルス自体を高感度に検出する検査方法。
引用:医療介護CBニュース
<HIV感染>再び増加 4~6月、過去2位の276人
2008年8月19日
厚生労働省のエイズ動向委員会は19日、4~6月のHIV(エイズウイルス)新規感染者が、四半期ベースで過去2番目に多い276人に上ったと発表した。過去最多は昨年10~12月の277人。今年1~3月は約1割減ったが、再び増加に転じた。新規のエイズ患者は過去4番目に多い109人だった。
新規HIV感染者の感染原因のうち、最も多いのは同性間の性的接触で、異性間は2割以下だった。しかし、新規エイズ患者では異性間が5割を占めており、感染した段階で適切な治療を受けていないケースが多いとみられる。また、エイズを発症するのは約半数が40歳以上だが、30代も45人と1~3月より5割以上増えており、厚労省は「若年層への検査と治療の促進が不十分」と分析している。
引用:毎日新聞
ホテルに五輪特製コンドーム40万個配布―エイズ予防
2008年8月17日
北京市衛生局はこのほど、五輪とパラリンピック開催中に、市内のホテル128軒に特製コンドーム40万個を無料配布したことを明らかにした。客室に置き、HIVウイルス(エイズ原因ウイルス)の感染予防を図るためという。
同局によると、エイズ予防の一環としてホテルには「エイズ予防・制圧読本」というパンフレット25万冊も配布した。五輪・パラリンピック期間中には大学生と住民によるボランティア681人が、市内128カ所の特設ステーションで、HIVウイルス感染の無料検診を行なう。
写真は上海市内に設置されたエイズ予防のためのコンドーム使用を訴える看板。中国新聞社が2007年12月1日付で配信。同電によると、上海市におけるコンドーム使用率は25%で、全国平均よりも大幅に高いという。
引用:中国情報局
アフリカのODA使途視察 「国際協力理解深めたい」 福岡雙葉高2年・近藤さん
2008年8月15日
外務省が公募した、政府開発援助(ODA)の使途を視察する「ODA民間モニター」に、福岡雙葉高2年の近藤那子(なこ)さん(16)=福岡市南区=が選ばれた。16日に、アフリカ・タンザニアに出発する予定で、近藤さんは「ODAを現地の人がどう感じているのか知り、国際協力への理解を深めたい」と意気込んでいる。
ODA民間モニターは、実態が見えにくいODAの事業を視察し、その感想を外務省や周囲に報告する制度で、同省が毎年実施。昨年から高校生も参加可能になった。
近藤さんは、中学生の夏休みに米国や英国に短期留学した際、世界各国の留学生と交流。アフリカの留学生が「警察が機能していない」「生活格差が大きい」と話していたのが印象に残り、途上国に興味を持った。
また、3月には米国で開かれた「高校生サミット」に参加し、飢餓について討論した際、「援助をもらっても国民には届いていない」という途上国の意見を聞き、さらに関心を高めた。
学校の掲示板で、外務省の募集を知り、5月に応募した。1795人の応募の中から、作文や志望動機などの選考の結果、66人が選ばれ、うち近藤さんを含めた8人が高校生という。
現地では、孤児教育センターやエイズ対策施設など8カ所を視察する。将来、世界中の人の役に立つ仕事がしたいという近藤さんは「ODAがどういうルートで施設に渡っているのか知りたい。また、現地で国際協力活動をする日本人にも話を聞いて、将来を考えるきっかけにしたい」と話している。23日に帰国予定で、同高の文化祭や部活動で視察の報告会を開くという。
引用:西日本新聞
7月の感染症(伝染病)死者は1009人!エイズが最多―中国
2008年8月12日
11日、中国衛生部は08年7月全国法定伝染病の感染状況に関する統計を公表。計1009人の死亡が報告されたが、エイズによる死者が最も多い。写真は07年11月、中国各地でのエイズ予防運動。
引用:Record China
国際エイズ会議が閉幕
2008年8月 9日
メキシコ市で開かれていた第17回国際エイズ会議が8日、閉幕した。会議では感染拡大防止に向けた今後の方策などを討議。参加者からは、予防や治療の充実、世界規模での患者支援の強化に対し、国際社会の結束した取り組みを求める声が相次いだ。
引用:時事通信
エイズの感染源、中国本土の売春婦が「最も危険」―香港
2008年8月 8日
2008年8月8日、中国新聞網によれば、香港衛生予防センターが「中国本土の売春婦との性行為が、香港人にとってエイズウイルスに感染する危険性が最も高い」との警告を発表したと、香港の「星島日報」が報じた。
衛生予防センターが1995~2002年に性病で診察に訪れた約15万人のデータを分析し、その研究成果を「香港医学雑誌」に発表。研究によれば、その中から160人以上のエイズ患者の病歴を調査したところ、大部分が男性患者だということがわかったほか、60%の人が売春婦と性交渉を持つ関係にあり、 56%の人が最後に行った買春の相手が中国本土かマカオの売春婦だったことが判明。 【その他の写真】
過去3か月間で常にコンドームを使用していた人はわずか29%にすぎず、41%の人は行為の途中から使用、30%の人はコンドームを一切使用していなかったこともわかったという。
研究ではさらに、中国本土で行う「行きずりの性行為」がエイズウイルスに感染する危険性が最も高い」と指摘され、香港人が中国本土での性行為にコンドームを使わないことがエイズ感染の拡大に大きくかかわっているとし、安全な性行為の知識を周知させる必要性が指摘されている。
引用:Record China
<エイズ>感染ルートの調査開始、予防対策の確立へ―中国
2008年8月7日、中国では今月1日から、エイズ感染者に対する本格的な遡及・追跡調査が一部地域で試験的に始まっていることがわかった。感染ルートや2次感染の状況を把握することで、適切な予防措置を確立したい考えだ。中国新聞社(電子版)が伝えた。
中国衛生部疾病予防コントロールセンターが明らかにしたところによると、調査は今月1日から9月30日まで、重慶市、広東省、雲南省、河南省の4省・市で行われる。対象は新たに感染が発覚した患者または感染の疑いがある人達。感染ルートや2次感染などの状況を徹底的に洗い出し、有効的な予防対策を立てたいとしている。
中国衛生部と国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界保健機関(WHO)が共同で公布した「中国エイズ予防に関する評価報告」によると、昨年末時点で中国のエイズ患者数は約70万人、うちエイズ発症者は8万5000人となっている。
引用:Record China
松本潤 24時間テレビでHIV患者取材
日本テレビ・読売系「24時間テレビ31 愛は地球を救う」(30日 後6・30)のメーンパーソナリティーを務める嵐・松本潤(24)がこのほど、エイズ感染率が東南アジア最悪というカンボジアを訪れ、社会問題化している「HIV母子感染」の現状を取材した。
7月31日から8月4日まで現地を訪れた松本は、プノンペンから車で1時間ほどのある村では母子感染した120人の子供たちと触れ合った。感染した子供たちが暮らす施設や、子に感染させてしまった親へのインタビューなど精力的に取材。罪もない子供たちが差別と貧困、死と隣り合わせに生きる現実をリポートする。
松本は「子供たちのために、また世界で起こっているこの状況に何ができるか、何が必要なのかを考える貴重な時間になりました」と語っている。
引用:デイリースポーツ
HIV感染者高齢化、受け入れ先確保に課題
2008年8月 5日
高齢化して介護が必要となったHIV感染者の受け入れ先確保が困難を極めている―。このほど横浜市で開催された「AIDS文化フォーラムin横浜」で、横浜市立大学付属病院でソーシャルワーカーを務める友田安政氏が現場の窮状を訴えた。友田氏は、現行の医療・介護制度では、高齢のHIV感染者の受け入れ先確保は難しいと指摘した。
「治療法の進歩で、HIV感染者がAIDSで亡くなることは減少してきている。だが高齢となった感染者が、がんや心筋梗塞、脳梗塞、その他の疾患を患い、介護や療養が必要となったときに、受け入れ先が見つからない」―。友田氏はHIV感染者の受け入れ体制の現状について、このように述べた。
HIV感染者はAIDS発症を抑えるため、高価な抗HIV薬を複数組み合わせて継続的に服用するHAART療法を必要とする。こうした人が、在宅療養が困難となり、医療・介護施設に入院・入所しなければならない場合には、長期的な療養サービスと高額な医療の両方を要する。
これについて友田氏は、「一般病院では在院日数の短縮化が求められているため、長期の入院が難しい。リハビリ病院や療養型病院では、専門医がおらず、また包括診療のため高額な治療ができない」と指摘。施設側の経営を圧迫することにつながるため、HIV感染者の受け入れ先の確保が難しいと話した。
また、介護施設についても、「特別養護老人ホームでは医師・看護師の配置数が不十分。待機期間も年単位だ。介護老人保健施設では、介護保険の施設サービス費の中で医療を提供しないといけないため、療養型病院と同様、HAART療法を行うとなると、老健の赤字になってしまう。また外来受診に制約があるので、老健の外で治療を受けるのも難しい」と説明。現行の医療・介護制度がHIV感染者の受け入れを困難にしていると指摘した。
HIV/AIDS診療では、1996年からHAART療法が導入されている。同病院のリウマチ・血液・感染症内科医師である上田敦久氏は、この HAART療法について「AIDS発症を抑えるのに効果を上げており、HIV感染者の延命を可能にしている」とした上で、HIV感染者の高齢化が進んでいると指摘。「HIV/AIDS診療においては、今後長期療養や介護の問題が一層重要になってくる」との認識を示している。
■HIVへの無理解が受け入れを一層困難に
社会のHIV/AIDSに対する無理解も、HIV感染者の受け入れ先確保を難しくしている。
友田氏は、「HIV感染対策が十分でない」との理由で、多くの医療・介護機関にHIV感染者の受け入れを拒まれている現状を報告。「HIV感染者だと分かっていようが、分かっていまいが、リスクを意識して対処するのが本来あるべき姿。『感染対策が十分ではない』との理由で受け入れを拒否するのはおかしいのではないか」と話した。
また、「(HIV以上に感染リスクの高い)B型肝炎の患者を受け入れている医療・介護機関が、HIV感染者については、『感染対策が十分でない』との理由で受け入れを拒否する」という事例も紹介した。
なお上田氏によると、針刺し事故における感染率は、HIVで0.3%、C型肝炎は3%、B型肝炎は30%。
引用:CBニュース
<国際エイズ会議>メキシコで開幕、2万2000人参加
第17回国際エイズ会議が3日、当地で開幕した。ラテンアメリカでの同会議開催は初めてで、世界から約2万2000人が参加。「今こそユニバーサル(世界共通)な行動を」をテーマに8日まで開かれる。開会セッションでは潘基文(バン・ギムン)国連事務総長が演説し、「会議の取り組みは、エイズ予防と治療へのユニバーサルアクセスを実現させるものだ」と評価した。
引用:毎日.jp
<北京五輪・関連>選手村でコンドームを無料提供―北京市
2008年8月 2日
2008年8月2日、「セイフセックスでエイズ抑制」をテーマに北京五輪エイズ予防キャンペーンが始まった。国連エイズ合同計画とIOC(国際オリンピック委員会)、北京五輪組織委員会が合同で行うこのキャンペーンでは、北京五輪に参加する選手とスタッフに対しエイズに関する情報とコンドームを提供する。「中国新聞網」が伝えた。
北京五輪選手村にある総合診療所には高品質のコンドーム10万個を用意。英、仏、中の3か国語で書かれたエイズ予防と差別問題に関するパンフレットとともに各国の選手やスタッフに無料で配布する。
IOCのロゲ会長は式典のなかで「有名スポーツ選手は若者にとってアイドルと同じ。彼らがエイズ予防に関心と支持を寄せることは大きな意義を持つ」と話し、国連エイズ合同計画の責任者ピーター・ピオット氏も「各国の代表選手たちの参加は、エイズ感染者に対する差別廃止に大きな力を発揮する」と期待の言葉を述べた。このキャンペーンは北京市以外に山東省青島市と香港の五輪会場でも行われる予定。
引用:Record China
薬害エイズは官僚組織で起きた
2008年8月 1日
【第22回】
小野俊介さん(東大大学院薬学系研究科准教授、薬学博士)
なぜ、薬害が起きるのだろうか。薬害の再発を防止するにはどうしたらいいのか―。薬害肝炎事件の反省を踏まえ、厚生労働省は医薬品の安全対策に当たる職員を大幅に増員する方針を決めている。しかし、増員された職員が働く新しい組織の在り方について、厚労省の検討会では意見が割れている。厚労省は2つの案を示しており、「医薬食品庁」(仮称)のような公務員型の組織に安全対策などの薬事業務を一括する案と、独立行政法人・医薬品医療機器総合機構 (PMDA、総合機構)に一括する案を示している。厚労省は、公務員型の組織を創設したい意向だが、小野俊介さんは「薬害エイズ事件は官僚組織の中で起きた」と強く反対している。小野さんは、1989年に東大薬学部を卒業後、同年に旧厚生省に入省。その後、総合機構で審査官を務め、現在は東大で「医薬品評価学講座」を担当している。厚労省が示している「公務員型の組織」と「非公務員型の組織」の実情に詳しい小野さんに、薬害の発生原因や望ましい組織の在り方などを聞いた。(新井裕充)
―なぜ、薬害が起きるのでしょうか。
いろいろな原因が考えられます。例えば、皮膚の病気を治す「ソリブジン」という薬と抗がん剤との飲み合わせで起きた副作用で患者が死亡した事件では、基礎実験のデータを医薬品の審査官も製薬企業も軽視していました。市販前の臨床試験では、抗がん剤を飲んでいる人にはほとんど投与しないので、実際は死亡例があったのに気が付かなかったのですが、市販後に副作用がたくさん出ました。基礎実験の時点で気が付かないことは無数にありますが、神様の目から見れば「基礎実験で分かったはずだ」ということになります。
―薬害は、その薬が誕生した時から運命付けられているのでしょうか。
薬は、飲む人が決まってから良いことも悪いことも起きますので、必ずしもそのように言い切れません。一粒の錠剤がそこらに散らばっているだけでは、健康被害は起きないのです。例えば、「米国人が飲んだら安全だが、日本人が飲んだら健康被害が生じる」というように、副作用は薬が人間の体の中に入って初めて起こります。
―とすると、重い副作用が発生する薬でも、永遠に顕在化しない場合がありますね。
世の中の薬はほとんどそのようなものばかりです。臨床試験で得られるデータは少ないので、服用する人が増える市販後の安全対策が重要になります。市販後に得られる副作用情報に基づいて、服用する際の注意事項を「添付文書」(薬の説明書)に記載することで、軌道修正します。市販後に情報が集積する中で、薬という物と患者との関係が進化していくのです。
■販売中止の判断に明確な基準はない
―では、「この薬は危険だ」と判断して、市場から"退場"させられるのはどのような場合でしょうか。
ほとんどの薬に何らかの副作用がありますので、この判断が難しいところです。副作用が発生した件数が多ければすぐに退場になるというわけではありません。生命の危険にかかわる副作用の場合には、件数が少なくても退場になる場合がありますし、予測された副作用かどうかによっても違います。副作用が発生した件数や疾患など、判断する上で考慮する組み合わせがいろいろあります。
―「頭痛薬を飲んで下痢になったら許せない」というような判断ですね。
それ、許せないですか? 「それぐらいなら...」という判断をする頭痛持ちの人もいるかもしれません。まさに、そういう判断の違いがいろいろあるということです。例えば、「ある抗がん剤を飲むと重い副作用が出るが、寿命が半年延びる」という場合、その投与を希望する人もいるかもしれません。また、まれに死亡する場合もあれば、治る可能性もある薬の場合、命を延ばす可能性に賭ける人もいるでしょう。逆に、寿命が半年縮まってしまうが、激しい痛みがなくなって夜も眠れるようになる場合はどうでしょうか。服用するかどうかの判断は、それぞれの患者さんの価値観などによって分かれるところです。
―処方する医師と患者との関係では「説明と同意」で解決できますが、「薬の販売をやめる」という場合はどうでしょう。
自然科学と社会科学との接点の問題で、もっと議論しなければいけない領域です。「この薬は駄目だ」ということを、審査を担当する個人の思い込みで決めるのか、あるグループの意思決定で決めるのか、そこに何らかの基準があるかなど、もっと議論を深める必要があります。ある薬を承認することによって発生する危険性と、得られる利益とのバランスを測る「リスクベネフィット分析」という学問領域がありますが、現段階では実用的かどうか疑問があります。経済指標や株価などの情報から得られたモデルを実際の経営にそのまま当てはめてもうまくいかないように、「こうすれば必ず正しい結果が得られる」という明確な方法がないのです。
―薬害は一定の確率で発生し、完全に防ぐことは難しいのでしょうか。
確かに、リスクとベネフィットのバランスを失している判断も中にはあるでしょう。しかし、判断をする時点では分からないこともあります。後から振り返って、「あの判断は間違いだった」ということも多いのです。これを一気に解決することは、現在の科学レベルでは難しい。「現在の科学を進化させればいい」「人間がもっと利口になればいい」という提案は可能ですが、答えを見つけるのは容易ではありません。ただし、そのようなダイナミックな議論は決して無駄ではありませんので、時間軸を10年後、20年後に置いて議論すべき課題です。
■"理想郷"はない
―科学の進歩に伴う「不確実性」を解決する方法と、薬害の再発防止に役立つ組織の在り方とは別次元の問題と考えるわけですね。
そうです。医学や薬学が進歩する限り、不可避的に発生する逃れようのないリスクの世界がありますので、これらを全部一度に解決しようとするのは無理です。厚労省の検討会では、薬害の再発防止に向けた新しい組織の在り方として、「公務員型の組織」と「非公務員型の組織」の2つが提案されており、わたしは「非公務員型の組織」に賛成しています。しかし、「100対0」のような「ノックアウト勝ち」ではなく、「100対80」ぐらいの「判定勝ち」という判断です。
―「公務員型の組織」には、どのような問題がありますか。
例えば「この薬は危ないので販売中止にしよう」という判断を行う場合に、「危ない」ということが確実に分かるまで待つという体質、一歩先に動かない保守性があります。大胆な決定をすると、製薬企業や患者など周囲に波紋が広がるため先送りにするのです。これは日本の公務員の意思決定の特徴です。
ただし、「公務員」という言葉でくくってはいけません。終身雇用で、ずっと組織に従属するのが「日本の公務員」で、同じ公務員でもFDA(米食品医薬品局)の職員のような米国の公務員とは全然違います。「この薬は危険だ」と声を上げて首になるよりも、組織を防衛しようという判断が強く働く可能性があります。薬害エイズ事件は、そのような官僚組織の中で起きたと言われています。判断が難しい場合、「患者の健康を守るにはどちらがよいか」と考えずに、「国という組織を守る」という方向で対応を遅らせたり、判断を誤ったりすることが起こりやすいのです。
―しかし、安全対策などの薬事業務を「非公務員型の組織」に一括する案に賛成する委員は、検討会では少数ですね。
薬害の被害者の方々が、「国に責任を持ってやってもらいたい」と言う気持ちも分かります。わたしも、現在の総合機構(非公務員型)が全面的によいとは思っていません。総合機構は総合機構なりに役所くさいところがありますし、総合機構に薬事行政を一括した場合の行政法上の問題点もあります。しかし、官僚組織よりはよいという判断です。もし、どこにも欠陥のない理想的な組織がつくれるならば、もちろんそれに賛成しますが、現状では難しい。米国人の合理性と英国人の慎重さと、そして日本人の辛抱強さを兼ね備えたような人を500人ほど集めて、政治家など外部からの圧力を受けても揺るがないような組織が作れるのならば、それがベストですが、そのような"理想郷"はありません。
■自由な議論ができる組織に期待
―舛添要一厚労相が厚労省の技官人事を見直す方針を打ち出しました。
医師免許・薬剤師免許を持っている技官(医系技官・薬系技官)は、「自分たちの職能・職域は何があっても保障されている」と考える傾向があり、それに伴う特殊な行動様式があるように思います。現在、技官の問題を厚生行政の重要な問題と大臣が考えているようです。
「患者を診た経験があまりない」「医薬品開発の現場を知らない」という技官も多く、何年も厚労省の中にいると腕が鈍ってしまって、現場に戻りにくい。そのような中で、現場や社会の実情に即していない政策や判断が生まれることもあります。「では、技官が悪い人たちなのか」と問われれば、「そんなことはない。世の中すべての人と同じ」でしょう。終身雇用の中で、「行政官」という立場に置かれたら、「世の中の誰でもきっとそうするだろうな」という行動を予想通りしているという感じでしょうか。
―安全対策に当たる担当者を現在の66人から300人程度に増やすようですが、「人を増やせばいい」ということではなさそうですね。
「ハコ」をつくって、そこに300人放り込んで、それできちんと安全対策ができるのでしょうか。「こうしなさい」ということを紙に書いて300人に読ませて薬害が防げるなら、こんなに楽なことはありません。医薬品の安全対策を担う職員が、国民の健康を考えて働けるような「機能」を考える必要があります。つまり、最初に「ハコ」ありきではなく、専門家集団が自由に議論できるような「機能」を考えるべきなのです。
―薬害を起こした公務員型の組織ではなく、現在の総合機構を強化すべきという意見ですね。
現在の総合機構には、周囲から「こうしろ」と言われても、報告書には自分の正しいと思うことを書いて返すような反骨精神のある人もいます。専門的な知識のある人が中途採用されることも多く、専門性の集積が少しずつ進んでいます。国会対応している役人とは異なり、「科学的な審査をして、見つけたことをきちんと書く」という文化が徐々に形成されています。薬害の再発を防止するため、自由な議論ができる組織に期待したいと考えています。
引用:CBニュース