エイズHIVの問いかけ

エイズが私たちに問いかける最大の課題は、HIVが性交という人と人とのもっともプライベートで親密なコミュニケーションで、しかも性感体で粘膜を通して侵入し、その結果人と人との間に亀裂を生じさせ相互を阻害しあう性感染症だということなのです。


HIV感染によって失う友や恋人やパートナーが出れば、それこそHIVウイルスへの人間の敗北になります。人々の間に嫌悪、隔離、排除、無視が始まれば、これこそ疫学上の方策ではどうにもならない人間の侵害です。「エイズ教育」がどんなに徹底してもこの共生の思想が崩れたら、人間は生き残っても人間関係は廃墟となります。
エイズによって阻まれる「愛」や「性」とは何なのでしょうか。エイズごときウイルスでも人間はスキンシップである性的関係を放棄したり抑制はいないでしょう。エロスをかかえて生きているのが人間ですから、そのエロスを満たす上で肌と肌の触れ合いをかくことはできません。乳児から老人まで肌を持ち、エロスをかかえて生きる存在である限り人との間に肌のむくもりを感じあう行為が必要なのです。性の持つ意味はここにあります。
指切りげんまんから性交まで様々なスキンシップのなかで、より濃くよく深く思いスキンシップである性交をエイズの時代にいかに守り通せるのでしょうか。HIVはふたりに愛があろうとなかろうと金銭の取引があろうとなかろうとかまわず侵入してくるだけに、広く人間全体の問題として私たちはHIVとエイズのつきつけた課題に答えなければなりません。人権も無視してはならないし、共生の一画をくずされてもならないのです。

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